頼母子講(たのもしこう)

頼母子講(たのもしこう)あるいは頼母子(たのもし)は、実際にはいろんなバリエーションがありますが、以下は現在も行われているものです。

0.まずベースになるのは、集団型の積み立て貯金です。例えば、10人のメンバーが集まり、1ヶ月に5万円を1年間(12ヶ月)行うとしましょう。
つまり1ヶ月分として50万円のお金が集まり、最後には600万円のお金が集まることになるわけです。積み立てが満期になれば、それをまた10人のメンバーで分配、つまり各人が60万ずつ手にする訳です。

1.ところで、積み立てが満期になるまで待てない人がいます。至急にお金が必要なわけです。
毎月の積み立てには、メンバーがお金を持って集まります。これには理由があります。毎月の集まりでは「入札」を行います。その月にお金が必要な人は複数いるかもしれないので、メンバーは各自様々な状況を考えた上で、5万円以下の金額を書き込んだ札を箱に入れます。もっとも低い金額(ここでは、例えば4万5千円とします)を書き込んだ人が、その月集まったお金をすべて借りることができます。
今、「落札額」となった4万5千円は、今月の各メンバーの積み立て金額となります。したがって、今の場合は、10人が4万5千円を出し合い、集まった計45万円が、入札した人のところへ貸し出されるのです。

2.しかし、その月に集められるはずの金額は10人分で50万円でした。したがって、45万円を借りた人は、期日までに50万円を返さなければなりません。どれだけを借りても(借り入れ金額は落札額に左右されます)、返済額は50万円です。より低い金額を書けば落札しやすくなりますが、手にする金額も減少します。加えて返済額は一定ですから、返済のために補充すべき金額が上がり、結果としてより高い利子で借りるのと同じ事になるのです。

3.一方落札者以外のメンバーは、本来なら5万円払わなければならないところ、より低い額を出せば済んでしまうのです。そうして、満期になれば手元に戻ってくる額60万円は変わりません。つまり、至急お金が必要な人が毎月いればその分積み立て額が減り(たとえば4万5千円の落札額なら5千円が儲かります)、戻ってくるお金は変わらないわけで、より高い金利がついたのと同じことになります。

4.借り手は、高利ではあるが審査も面倒な手続きなしですぐに借りられるメリットがあります。どうしてもその月にお金が必要な人は、あらかじめ落札できそうな額を講の主宰者(講元、親)と打ち合わせておくこともできます。積み立てる側のメリットはもちろん、高い利息です。営利目的といっていいギスギスしたものもありますが、満期にメンバーで旅行に行ったりゴルフに行ったりする親善目的のものもあります。

5.もちろん、お金を借りた落札者が返済しないというリスクはあります。その場合は講元の責任で肩代わりします。もちろん、講の主宰者(親)はそうならないようなメンバーを選びます。借り手と貸し手が同じグループに属することが、持ち逃げのリスクを下げているのかもしれません。また頼母子は普通、濃い人間関係(しばしば血縁関係)の間でメンバーが選ばれます(だから誘われたら断りにくいのです)。普段からの信用の問題と、裏切ったときの犠牲が大きいこと、そして逃げてもどこへ取り立てに行けばいいのか、立ち回り先はどこかということが、その人間関係から明らかになるのでこれまたリスクを下げます。

6.したがって講元には、財力やリーダーシップなどが問われます。地域や一族の有力者がなることが多い所以です。

7.複数の、ときに非常に多くの頼母子に参加している人もいます(大阪のまちの頼母子に参加するために、毎月通っていたりします)。家を買うためであったり、財産を作るためだったり目的は様々ですが、相当の活用ぶりです。平均的な預金金額を遙かに上回る金額を、頼母子で運用しています。全体的に見ても、かなりの繁盛ぶりです。

8.プロの金融屋さんが事業に失敗して参加していたタノモシから借りた金を返せず、頼母子から追いかけられている人までいます。

その他の講

頼母子講はいわゆる「金銭の相互扶助」ですが、日本には「労働力の相互扶助」システムもありました。それが「結(ゆい)」または「手間換(てまがえ)」などとよばれるものです。特に農村を中心に広まっていたシステムで、お互いに労働力を融通しあうというものです。1日の労働は必ず1日の労働で返すのが原則で、金銭やモノで相殺はできません。
合掌造りで有名な白川郷では、今でも屋根の茅の葺き替えを「結」で行っていることで有名です。

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