研究者達

水を電気分解することによって、人工的に作られる“電解還元水(アルカリイオン水)”の原理自体は、200年以上もの昔、1800年にイギリス人、ニコルソンとカーライルによって発見されていました。
しかし、飲用として水を電気分解する電解整水器が誕生したのは、1958年の日本だそうです。

電気治療器の研究者 諏訪方季(すわみちすえ)氏

水素を含んだ飲料水といえる“水素水”の起源は、1958年(昭和33年)に電気治療器の研究者であった諏訪方季(すわみちすえ)氏が考案した「シンノオル液製造器」(水の電気分解装置)の発明と言われており、人工的に造られた“水素を含んだ飲料水”と呼べる水は、既に50年以上の歴史を持っています。
この「シンノオル液製造機」の発売直後から、電解陰極水であるシンノオル液を飲むと体調が良くなるという評判がたち、マスコミにも取り上げられ、7年後の1965年(昭和40年)には、厚生省が「電解陰極水には、整腸効果が認められる」といった内容の通達“薬発第763号”を出しますが、「なぜ、電解陰極水に、そのような力があるのか?」という謎を解明しようとする医学的な研究は全くされませんでした。その後は大きな話題になることもなく、評判だけが口コミで静かに広まっていきました。

一般に認知されている“アルカリイオン水”という呼称は、「電解陰極水は、アルカリ性を示す水酸イオン(OH-)が豊富な水になる」という特性をもとに、1980年代初頭(昭和50年代半ば)に某大手電気メーカーによってつくられた造語が、電解水の口コミとともに広まったものです。
その後、「シンノオル液製造装置」の発売からおよそ30年後の1992年(平成4年)8月、日本テレビの報道番組「きょうの出来事」の中で、“驚異の水”と題して神戸市西区にある協和病院の河村宗典院長による「電解陰極水を用いた糖尿病による壊疽の治療例」が紹介されます。
当時としては、報道の内容は医学会の常識を覆すほどの衝撃的な内容だったために、これがきっかけとなり、一時的な“電解水ブーム”がわき起こります。大手電気機器メーカーも含めた多くの電解整水器メーカーが現れ、販売合戦が繰り広げられました。しかし、その時点では、電解陰極水についての医学的・科学的な研究がほとんどなされていなかったために、治療効果についての確かな論証が見出されないまま、電解陰極水の効能についての誇大広告やそれに対する批判、そして“薬事法”違反ではないかという消費者からの苦情などが起こり、医療関係者や学術研究者、電解整水器メーカーなどの間で論争を巻き起こすこととなりました。

そして、「国民生活センター」から電解整水器に対する批判的な報告がされるとともに、厚生省から電解整水器メーカーに対する薬事法違反などの指摘があり、一旦、電解水ブームは沈静化しました。それとともに、「所詮、水は水であって薬のような治療効果などない」という懐疑的な消費者心理を生み出す結果になりました。

ところが、この出来事がきっかけとなり、翌年の1993年(平成5年)に、厚生省の外郭団体として財団法人「機能水研究振興財団」が設立され、それとともに京都大学医学部糸川嘉則教授を委員長とするアルカリイオン水検討委員会にて、アルカリイオン水の効果・効能に関する本格的な学術的研究が開始されることとなりました。

九州大学 白畑實隆教授

報道番組「きょうの出来事」での『驚異の水』の放送から5年後の1997年(平成9年)5月には、独自の立場で電解陰極水の研究を続けてこられた九州大学の白畑教授が、

「活性酸素の理想的な消去剤は“活性水素”であると言える。“活性水素”とは、水を電気分解すると、陰極側で生成される還元水中に存在する反応性の高い原子状水素である。」

といった内容の論文を、アメリカ生物科学誌「BBRC(BIOCHEMICAL AND BIOPHYSICAL RESEARCH COMMUNICATIONS)」誌に発表され、再び電解陰極水は大変な注目を浴びることになります。
そして、この論文発表を機に、水に溶け込む水素が注目されはじめ、「電解陰極水の活性酸素消去能の源は、豊富に溶け込んだ“水素(活性水素)”によるもの」ということを強調するために、電解陰極水(電解還元水)のことを、「水素豊富水」、あるいは、「活性水素水」と呼び始めたことがきっかけとなり、“水素水”という呼称が使われ始めました。
白畑教授が“活性水素”に関する論文を発表された当初、「反応性が高く、存在時間が極端に短い原子状水素が、水の中に単体で存在することは有り得ない」という反論が起こります。そして、その後の白畑教授の研究により、2002年(平成14年)に「陰極水中に電極から溶出した金属ナノコロイドが、“活性水素”のキャリヤー(運搬者)となり、ドナー(供与者)として機能する」との新たな論文とともに、その検出法を水素ラジカルの検出方法、及び定量分析方法として特許公開されました。
白畑教授が2003年(平成15年)に執筆された自らの著書『人間の体に「本当に良い水」はこれだ!』の中で、「実験室レベルの研究では、単に水素ガスを充填した水では還元作用を示さなかった」と記されており、水素分子ではなく活性力の高い“原子状水素”が存在しなければ充分な還元力を持った水にはならないとしています。

パトリック・フラナガン博士

日本において電解陰極水が持つ病の治癒効果の解明が進められ、九州大学の白畑教授による“活性水素説”の論文発表が行われる10年以上も前の1986年にアメリカにおいて「Elixer of the Ageless (不老の霊水)」という題の一冊の本が出版されます。
この本は、アメリカの天才科学者パトリック・フラナガン博士によって、長寿の村として名高い『フンザの水』を20年近くにわたった研究した結果について書かれたものでした。
フラナガン博士がフンザの水の研究から見出されたのは、「水に溶け込んだ強いマイナス電荷を帯びた極微小なコロイド状ミネラルが長寿の謎を解く鍵である」という発見でした。そして、自らそのような特性を持つ極微小なコロイド状ミネラル粒子を試作し、その粒子を溶かした水がどのような特性を持った水になるか、そしてその水を飲み続けた人々の体にどのような変化が生じるかを調べ、ついには長寿をもたらすフンザの水を人工的に再現した“クリスタルエナジー濃縮液”の試作に成功されたのでした。

九州大学の白畑教授の電解陰極水の研究とフラナガン博士のフンザの水の研究は、それぞれ全く別のアプローチによって研究されたにもかかわらず、これらの水の研究から導き出された結論は、水に溶け込む極微小なコロイド状のミネラル粒子が、原子状水素やマイナス水素イオンなどの活性水素を吸着し、これら還元力の強い活性状態の水素が体内において抗酸化物質として機能し、健康維持と老化の抑制に貢献するという共通点を持っていたのです。
白畑教授が米国科学誌に発表された論文が契機となり、“電解水”や“水素”に大いなる注目が集まり、様々な分野でその論文内容についての検証・研究が行われてきました。

東京大学大学院先端生命科学専攻 宮本有正教授

東京大学大学院 先端生命科学専攻の宮本有正教授は、2005年(平成17年)1月に東京で開催された第22回コロイド・界面技術シンポジウムにて、白畑教授の活性水素説に対する反論として、「白金(プラチナ)ナノコロイドが、抗酸化作用を示す」といった研究内容を発表されています。また、電解陰極水の持つ抗酸化力は、溶出した電極材に使われている白金(プラチナ)そのものが関与している可能性を示されました。

広島県立大学生命科学科 三羽信比古教授

その一方で、2006年(平成18年)3月には、広島県立大学 生命科学科の三羽信比古教授らの研究チームは、「水の中に従来技術の10倍の水素を溶かすことに成功し、この水に抗酸化効果があることを培養細胞による実験で確認した」という発表を仙台市で開かれた日本薬学会で発表しました。これより、分子状水素であってもその溶存濃度が高ければ抗酸化作用を示すことを確認しておられます。そしてこの後、日本医科大学の太田教授の論文発表へと続きます。

太田成男教授ら

そして、2007年(平成19年)5月にアメリカの科学雑誌「Nature Medicine」にて発表された日本医科大学大学院 細胞生物学の太田成男教授らによる「強い酸化力でタンパク質や遺伝子の本体であるDNAなどにダメージを与え、がんや多くの生活習慣病を引き起こすとされる活性酸素を水素ガスで効率的に除去できることを動物実験で突き止めました。
「水素をとけこませた水の影響を培養細胞で調べたところ、酸化力が強くて体に有害な「ヒドロキシラジカル」という活性酸素を除去できることがわかった」という内容の論文です。この論文は、従来の医療の常識から判断すれば画期的な内容であるがゆえに様々な注目を集め、新聞やテレビニュースなどのマスコミにも取り上げられてきました。

東邦大学薬学部生化学教室 石神昭人准教授ら

さらに、2008年(平成20年)8月には、東邦大学薬学部生化学教室の石神 昭人准教授らのグループが、水素を高濃度に溶解した水素水の飲用がビタミンCの不足による脳での活性酸素の増加を抑制することを、世界で初めて明らかにされました。この研究成果はオランダの学術雑誌であるBiochemical and Biophysical Research Communicationsの8月14日付の速報版として掲載されました。

山梨大学教育人間科学部小山勝弘准教授とパナソニック電工株式会社

2009年(平成21年)7月には、山梨大学教育人間科学部小山勝弘准教授がパナソニック電工株式会社との共同研究によって「水素を含んだ電解アルカリ水の飲用により、運動による体内ストレスを抑制する効果を検証されました。

九州大学大学院薬学研究院 臨床薬学部門の野田百美准教授らのグループ

2009年9月には、九州大学大学院薬学研究院 臨床薬学部門の野田百美准教授らのグループが、パナソニック電工(株)との共同研究により「水素を含んだ水の日常的飲用が、パーキンソン病等の脳神経疾患の予防と治療に有用である可能性がある」と検証され、9月30日付けのアメリカのオンライン科学誌「PLoS ONE (Public Library of Science)」に掲載されました。

医学界では

医学界では、1999年(平成11年)の第25回日本医学会総会において、「アルカリイオン水の基礎と有効利用」と題したシンポジウムが開催され、京大糸川教授らのアルカリイオン水検討委員会によって実施された、飲料水としては世界初の二重盲検比較臨床試験により「アルカリイオン水は、消化不良、慢性下痢、制酸、胃腸内異常発酵、胃酸過多および便秘に有効」との検証結果が医学の分野で初めて発表されました。
さらに、2003年(平成15年)の第26回総会においては、「電解機能水の進歩と21世紀の医療における役割」と題したシンポジウムが行われるまでになりました。
2007年(平成19年)5月には、水素と医療研究会主催による、第1回ドクターズシンポジウム-「水素と医療」臨床研究発表会が開催され、第一線で活躍している7人の臨床医の先生方による水素発生食品の臨床使用例が発表されました。
このシンポジウムでの発表内容は2007年11月に「水素と医療」と題する書籍として出版されています。
また、福岡県春日市にある伊藤病院の伊藤実喜(いとうみよし)先生は、水素水や水素サプリメントを臨床に応用してその効果を検証しておられ、水素サプリメントの継続的な飲用によって、白血球の中のがん細胞を食して除去するNK(ナチュラルキラー)細胞が急速に増えることを確認しておられます。

これらの研究により、現在、“水素”と名の付く様々な“水素サプリメント”“水素水”などの商品が大きな注目を集めています。

(文中 敬称略)

さらに詳しく!

● 奇跡の泉 “フンザの水”